2022年12月11日

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衛星電話とは?メリットやデメリット、使用方法など解説

 

 

携帯電波の届かない洋上や山岳で、また災害時の通信手段として東日本大震災(2011年)以降に活用されているものに衛星電話があります。地上網の一般的な回線とは独立した通信インフラを使用しています。

 

本コラムでは、衛星電話の特徴やメリット・デメリット、使い方などを解説します。衛星電話についてよくわからない方や、これから導入を検討している場合はぜひ参考にしてください。

 

衛星(携帯)電話とは? 

 

衛星(携帯)電話とは、宇宙にある人工衛星を利用した移動体通信サービス(携帯電話)です。衛星電話間で通信できるほか、一般的な携帯電話や固定電話との通話も可能です。

 

衛星電話の仕組み

 

衛星電話で通話すると、携帯端末から宇宙にある人工衛星まで無線電波が発信されます。そして、無線電波を受信した人工衛星が地上の衛星基地局と通信することで、携帯電話や衛星電話と通話できるようになっています。

 

衛星電話機→人工衛星→地球局→光回線→地球局→人工衛星→衛星電話機
*直接、衛星電話から衛星電話にかかっているのではありません。

ドコモ ワイドスターⅡなら、埼玉県熊谷市の地球局を通過し(そのため080、090番号)、

KDDI イリジウムなら、アメリカ アリゾナ州フェニックスの地球局を経由し通話します。

(そのため国際電話扱い)

 

衛星電話で使用する人工衛星は、「静止衛星」と「周回衛星」の2つです。基本的に各社製品は、このどちらかの人工衛星を使って通信しています。

 

<2種類の人工衛星>

人工衛星 主製品と特徴
静止衛星

●主製品:ドコモワイドスターⅡ、Softbank スラーヤ

・地上36,000km上を地球の自転とほとんど同じ速度で周回する人工衛星

・自転と同じ速度で静止衛星が移動するので、常に同じ方角(日本は南方)に衛星電話のアンテナを向けると通信できる

・人工衛星寿命(約15年)に合わせて、衛星電話機の買換え要

周回衛星

●主製品:KDDI イリジウム

・静止衛星よりも地球に近い780km軌道を周回する人工衛星

・頭上通過が15分程度。衛星の通過範囲にビル、山等の遮蔽物がある時間数は通信不可

・周回軌道がより衛星に近いので、静止衛星よりも通信の遅延が少ない

・人工衛星寿命(約15年)に合わせて、衛星電話機の買換え要

 

このように、静止衛星と周回衛星および地上局から衛星電話機までの光通信インフラを発信時・着信時に経由することで、地上間で衛星電話や固定回線への接続が可能となっています。

 

衛星電話の用途 

 

衛星電話は、主に通信インフラの整っていない洋上や山岳で使用されます。

 

大規模地震発災時には、多くの方が会社や家族と連絡を取るために電話を使用します。このとき、携帯電話から近くの通信回線事業者の基地局に電波を発信することで、相手と通話できるようになっているのです。

 

しかし災害時には初動が大事なので、固定電話・携帯電話の通信キャリアでは警察や消防へかける緊急電話を優先させるため、多くの方がかける一般電話番号への連絡には8割程度の発信制限をかけて、その空いた回線数分を緊急連絡が取れる補充に回します

 

災害時に人命救助に必要となる「緊急電話番号(警察や消防などへの電話)」を優先して繋ぐよう、通話の確保をするので、一般番号への通話時には、「只今地震のため、こちらの地域には通話しづらい状況になっています」等のアナウンスになり、通話しづらい状況が生まれるのです。

 

特に一般電話がかかりづらくなるのは、「家族・知人の安否確認」の連絡が多いためで、実に9割以上が安否確認電話と言われており、震源地の人口が多いほど、安否確認の電話本数が多くなり、繋がりづらい時間が長くなります。

 

そのため、各通信キャリアでは、「災害伝言板」などを用意して、電話の繋がりづらい時でも安否確認が取れるよう促しています。

 

一方で衛星電話の場合、災害時の一般電話へかける発信制限を設定しておらず、一般的な回線とは別のインフラを使用するので、混雑は起こりにくいと、東日本大震災(2011年)から数年間は考えられておりそのため企業では、地震や津波などの被害に遭ったときに、衛星電話を通じて本部や従業員とやり取りをするよう、BCP時の通信手段に選ばれていました。

 

 

衛星電話のメリット

 

衛星電話には、一般的な携帯電話や固定電話にはない利点があります。

 

地球上のどこからでも通話できる

 

衛星電話のメリットは、地球上のどこからでも通話できる点です。衛星電話は、ほぼ世界すべてをカバーしています。

 

そのため衛星電話は、特に通信インフラの発達していない国や地域で重要な通信手段として活用されています。

 

国内インフラを利用しないので災害時に影響を受けにくい

 

衛星電話は、災害時に地上の通信インフラが破壊されても通信しやすいメリットがあります。

 

ふだん私たちが使用しているスマホは、近くの通信回線事業者の基地局を介してやり取りしています。この通信回線事業者の基地局同士は、実は有線ケーブルでつながっているのです。そのため、大型地震によって通信回線事業者の基地局間の有線ケーブルが寸断されると、スマホでも通話するのが難しくなります。

 

一方で衛星電話の場合、地上の通信回線が地震で寸断されても、宇宙にある人工衛星を介して通話が可能です。そのため衛星電話は、特に災害時において貴重な通信手段として利用されています。

 

衛星電話のデメリット 

 

衛星電話は災害時につながりやすいメリットがある一方で、現代社会においては使いにくい側面もあります。

 

建物内では電波がつながりにくい

 

衛星電話は屋外で使用するものであり、建物内では利用できません。なぜなら、衛星電話と人工衛星の間に遮るものがあると、電波を発信できないからです。

 

衛星電話の電波は「直進性電波」です。端末から人工衛星まで、電波が一直線に飛ぶようになっています。そのため、端末と人工衛星の間にビルや山などがあると電波が遮られてしまい発信できません。衛星電話で通話するには、いったん屋外へ出る必要があるのです。

 

<直進性電波の弱点>

 

特に高層ビルで衛星電話を使用する企業は、下記のような無視できない弊害があります。

 

<高層ビルで衛星電話を使用する際の弊害>

・衛星電話を使うために一度地上へ降りる必要がある。特に高階層フロアの方は地上との往復で疲弊する

大規模災害時には停電でエレベーターが停止するので、衛星電話を使うには階段で昇り降りする必要がある

・東京や大阪の都心部は周りがビルに囲まれているため、地上に降りても通話できない可能性がある

 

このように現代社会では、衛星電話自体が時代に即していないといえます。そのため、特に高層ビルにいる方は、衛星電話の代替手段を考える必要があります。

 

めったに使わないのに料金が高い

 

企業にとって衛星電話は災害や訓練時にしか使わないにもかかわらず、高額な料金がネックとなっています。

 

衛星電話に関する料金は、おおむね次のとおりとなっています。

 

項目 料金
機種代金 100,000円~400,000円程度
機種レンタル 30,000円程度(月額)
月額基本料金 5,000円~10,000円程度
通話料金 50円~500円/30秒
バッテリー交換費用 10,000円~20,000円程度

 

このように、数十万円の衛星電話を購入したあとも、月5,000円~10,000円程度のランニングコストがかかります。加えて、衛生電話を長年使用していればバッテリーは劣化するので、高額な交換費用も発生します。

 

めったに使わない衛星電話にもかかわらず、毎月これだけのコストがかかるのはもったいないと感じる方も多いでしょう。

 

グループで通話できない

 

衛星電話は1対1が基本で、グループで通話できません。災害時には複数人でのやり取りが必要なシーンが多いにもかかわらず、グループ通話できないのはかなり不便です。

 

たとえば大規模地震発災時には、企業は社員全員の安全を確認したり、本部の指示を仰いだりする必要があります。また自治体は、川が氾濫して状況を確認しに行く場合、複数箇所を数人で確認するのが基本です。

 

しかし衛星電話の場合、複数人で同時に通話できないので、1対1で情報をやり取りする必要があります。そのため、どうしても情報集約に時間がかかってしまうのです。

 

さらに1対1でしか通話できないので、相手が通話状態のときには連絡できません。災害時には本部が常に通話状態になるので、いち早く情報を共有したいのに連絡を取れないのは非常に不便です。

 

ちなみに、グループ通話を可能にした緊急災害用無線機が、弊社が提供している「ハザードトーク」です。

 

<弊社が提供している緊急災害用無線機「ハザードトーク」>

 

グループ通話で速やかに複数人とやり取りできるので、災害時に速やかな情報集約が可能となっています。

 

将来は衛星電話の回線が混雑する可能性も

 

現時点では、衛星電話の回線混雑は起こりにくいと考えられています。しかし、総務省の「大規模災害時の非常用通信手段の在り方に関する研究会」によると、今後衛星電話の発着信量が年々増加すれば、2030年頃には災害時に輻輳(ふくそう)が起こる可能性もあると考えられているのです。

 

輻輳とは回線が1ヵ所に集中することです。電話回線やインターネット回線で輻輳が発生すれば、電話がつながりにくくなったりシステムがダウンしたりする可能性も考えられます。

 

つまり、今は正常に使える衛星電話も、将来の大規模災害時には使えなくなる可能性もあるのです。災害時に通信手段が断たれれば、ますます被害は拡大するでしょう。

 

衛星電話の使用方法 

 

 

出典:ワイドスターII 衛星可搬端末 01(NTTドコモ)

 

衛星電話の使用方法を、NTTドコモ社の「ワイドスターⅡ」を例に解説します。

 

1.屋外の上空が開けた場所に移動する

 

衛星電話を使用するために、まずは開けた空がある場所に移動します。周りにビルや山などの遮蔽物がない場所を選びましょう。

 

2.衛星電話の電源を入れる

 

電源ランプが点灯していることを確認します。いつでも衛星電話を使える状態にするためにも、常に充電しておくのがおすすめです。

 

3.アンテナ面を南方に向け、レベルランプが最も多く点灯する場所を探る

 

人工衛星がある南方へアンテナ面を向け、レベルランプが最も多く点灯する方向を探ります。災害時でもスムーズに利用できるように、ふだんから通信しやすいスポットを探しておきましょう。

 

4.電話をかける

 

衛星電話や携帯電話、固定電話などに電話を発信します。

 

発信先 電話番号
ワイドスターⅡ、携帯電話 090/080から始まる番号
固定電話 市外局番から始まる番号

 

まとめ

 

衛星電話は宇宙にある人工衛星を使って通信するので、海上や山間などの通信インフラが整っていない場所でも利用できます。また、一般的な回線とは独立した通信インフラを利用するので、災害時にもつながりやすいメリットがあるのです。

 

一方で、建物内では利用できなかったり、めったに使わないのに料金が高かったりするデメリットもあります。このように現代で使用するツールとしては、やや使いにくい側面があるのです。

 

そこで、弊社が販売している「ハザードトーク」は、衛星電話のデメリットを解消した緊急災害用無線機です。

 

<緊急災害用無線機「ハザードトーク」の特徴>

・「廻りこみ電波」を使用するので、ビルや山などの遮蔽物を避けてどこでも通信できる

・衛星電話にはないグループ通話機能で、素早い情報収集が可能

・画像や動画を共有できるので、災害現場の状況を把握しやすい

 

今お持ちの衛星電話の電波がつながりにくくてお悩みの場合や、これから衛星電話の導入を検討している企業・自治体様は、ぜひ弊社までお問い合わせください。

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