2022年8月2日
首都直下地震の避難所の現状や問題は?2022年5月被害想定見直しから考える避難所について
2022年5月25日に、東京都が首都直下地震の被害想定を見直しました。約10年前の被害想定に比べ、死者や負傷者数などの被害が減少しています。
一方で、首都直下地震が発生した時に気になるのは、避難者が向かう避難所です。現状、首都直下地震に対して避難所はどのように整備されており、またどのような課題を抱えているのでしょうか?
そこで今回の首都直下地震の被害想定見直しを受けて、避難所の現状や課題、被災時の適切な避難行動などを解説します。
目次
【2022年5月25日】10年ぶりに首都直下地震の被害想定が見直される
東京都は、約10年前の「首都直下地震等による東京の被害想定(平成24年公表)」以来、2022年5月25日に首都直下地震による被害想定を見直しました。
首都直下地震のなかでも、地震動に応じてさまざまなタイプの地震が想定されています。今回、いずれの地震においても、被害想定は2012年算出時よりも下方に修正されています。
<都心南部直下地震(M7.3)の被害想定比較表(風速8m/s、冬・夕方の発生を想定)※>
2022年5月25日公表 | 2012年4月18日公表 | ||
人的被害(人) | 死者数 | 6,148 | 9,641 |
負傷者数 | 93,435 | 147,611 | |
重傷者数 | 13,829 | 21,893 | |
建物被害(件) | 全壊・焼失棟数 | 194,431 | 304,300 |
<立川断層帯(M7.4)の被害想定比較表(風速8m/s、冬・夕方の発生を想定)>
2022年5月25日公表 | 2012年4月18日公表 | ||
人的被害(人) | 死者数 | 1,490 | 2,582 |
負傷者数 | 19,229 | 31,690 | |
重傷者数 | 2,898 | 4,668 | |
建物被害(件) | 全壊・焼失棟数 | 51,928 | 85,735 |
出典:東京都「首都直下地震等による東京の被害想定 概要版」「首都直下地震等による東京の被害想定 報告書」
※前回想定の東京湾北部地震と想定する地震動が異なるため、単純な比較は困難な点に注意が必要
都心南部直下地震で見てみると、死者数は3,000人以上、建物被害は10万棟以上の被害が減少しています。今回、被害が軽減された理由として、建物の耐震化や不燃化などが挙げられています。
なお、首都直下地震に備えた対策については「首都直下地震の被害想定と対策をまとめた記事」で詳しく解説しているので、こちらもぜひ参考にしてみてください。
首都直下地震に対する避難所の現状や問題
首都直下地震が発生し、住宅を失ったり、身の安全を確保したりするために避難所が必要になります。首都直下地震が発生した時、はたして避難所は正常に機能するのでしょうか?
そこで現状、首都直下地震の避難所の現状と問題を、次からまとめています。
発災後4日~1週間で避難者がピークを迎える
首都直下地震発生後、4日~1週間後で避難者がピークを迎えると予想されています。
2022年5月の「首都直下地震等による東京の被害想定 報告書」によると、首都直下地震で最大の被害が想定されている
都心南部直下地震(風速8m/s、冬の夕方の発生を想定)
時間推移 | 避難所避難者数 |
1日後 | 1,494,072 |
4日~1週間後 | 1,995,809 |
1か月後 | 492,726 |
自宅で待機していた被災者も、家庭内備蓄がつき始めるため、4日~1週間後で避難所の避難者数がピークを迎えると見られています。その後、自宅に戻る避難者も増え始め、1か月後からは避難者数は徐々に減少していきます。
避難者数がピークを迎える4日~1週間後では、物資やスペースの確保などが不足し、避難者のストレスが増加したり、ゴミやし尿などの処理が不十分で衛生環境が悪化したりするなどの問題が懸念されているのです。
もちろん、命を守るために避難所へ避難することは大切ですが、安全を十分確保できる環境にいる場合、”避難しない選択”も視野に入れる必要があります。
収容力を超える避難所が発生する可能性あり
首都直下地震の発生後、収容力を超える避難所が発生する恐れもあり、食料不足や避難所に行けない避難者などが懸念されています。それも発災直後ではなく、先述のとおり4日~1週間後において、もっとも収容力不足が心配されているのです。
避難所のともされる4日~1週間後では、体育館や教室などで避難所のスペースが足りず、階段や廊下などに避難者が溢れる恐れもあります。そもそも、天井の落下やガラスの飛散などによって避難所のスペースが減少し、収容力不足に追い討ちをかけるでしょう。
首都直下地震発生後は、避難所に避難したくてもできない可能性があることも念頭に置いておく必要があります。
新型コロナウイルスの感染防止も必須
密になりやすい避難所という空間で、避難者やスタッフなどへの感染防止に努めることが、今の避難所運営では必須です。
たとえば、避難者同士を接触させないためにテントを多数設置して仕切る対策や、発熱を訴える避難者を隔離する取り組みなどが考えられます。
2022年5月の新たな被害想定見直しによって、避難所避難者数が最大約200万人 にも及ぶとされています。なかにはひっ迫する避難所もあると見られているなかで、プライバシー確保や安全面以外に、新型コロナウイルス感染への懸念もあるのが現状です。
首都直下地震の発生時にどのように避難すればいいのか?
実際に首都直下地震が発生した際、被災地域の方はどのように避難所へ避難すればよいのでしょうか?そこで、首都直下地震が発生した時の避難方法を見てみましょう。
発災時は最寄りの「一時避難場所(一時集合場所)」へ避難
首都直下地震から逃れるためには「一時避難場所(一時集合場所)」へ避難します。一時避難場所とは、地震が発生した際に、一時的に避難する場所です。一時避難場所には、たとえば公園や広場、学校の運動場などが指定されています。
なお「避難場所」と「避難所」は異なります。前者の「避難場所」とは、津波や火災などから身を守るために避難する場所です(避難所の説明は後述)。
一時避難場所は、首都直下地震によって交通機関が麻痺したことによる帰宅困難者や、次に紹介する「広域避難場所」へ避難するための中継地点などに利用されます。
意外かもしれませんが、地震が発生すれば真っ先に目指す場所は、小・中学校のような避難所ではなく一時避難場所です(火災を除く)。一時避難場所で身の安全を確認してから、被災状況に応じて「避難所」や「広域避難場所」に移動します。
大規模火災発生時には「広域避難場所」へ避難
首都直下地震によって大規模な火災が発生し、延焼している場合は「広域避難場所」へ移動します。広域避難場所とは、火災による放射熱や煙から命を守るための場所です。広域避難場所には、大きめの公園や団地一帯などが指定されています。
2022年5月の首都直下地震被害想定の見直しでは、火災による建物被害が最大約11万棟、死者数が最大2,482名、負傷者数が最大9,947名と見られています。決して火災被害は無視できるものではなく、延焼によって自宅や避難所にいられない際は、広域避難場所への避難が必須です。
災害の危険が過ぎたあとに「避難所」へ避難
津波や家の倒壊などによって、自宅で生活できなくなった人が一時的に生活を送る場所が「避難所」です。避難所には、地域の小・中学校などが指定されています。
火災の延焼から逃れるために「広域避難場所 」へ避難した人が、自宅を失ってしまうケースもあります。その場合は、広域避難場所から避難所へ移動し、一時的に生活を送ることになるのです。
【自治体向け】「らくらく避難所くん」で避難者管理をデジタル化 しましょう!
首都直下地震が発生すると、避難所には数多くの避難者が長期間押し寄せます。自治体様のなかには、避難者名簿を手書きで管理するままになっている所もあるようです。
手計算での集計になると避難者の人数把握や非常食・救援物資等の必要品の管理が煩雑になるほか、取りまとめに時間がかかり計算しづらく、本部での対応や共有が遅れてしまうことがよくあります。
また、デジタル化していないと、住民にも避難所の混み具合がタイムリーにわからず、混んでいる避難所がさらに混んでしまう事にもなり兼ねません。
そこで、避難所の避難管理をデジタル化できるのが「らくらく避難所くん」です。
避難者にタブレットで氏名や住所などを入れてもらう手入力だけでなく、QRコードをかざすだけでも避難者を登録できます。手書きよりも受付管理が非常に簡単なので、避難所受け入れ混雑を緩和できるのが「らくらく避難所」の強みです。
危機管理担当部署側でも、各避難所の収容人数・男女・世帯数などを簡単に確認できます。また、受付業務のデジタル化によって人員を削減できるので、ほかの必要な業務に回せるようになる点も大きなメリットです。
避難所の避難者管理に頭を悩ませている自治体様は、ぜひ「らくらく避難所くん」の導入を検討してみてください。
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1つめは、建物用緊急地震速報受信機の「ハザードプロ」です。ハザードプロは、テレビや緊急速報メールよりも早く、地震の発生を検知して発報します。ハザードプロで地震の発生を前もって知り、すぐに身を保護する行動を取ることで、命を守ることにつながります。基準震度も自由に選択できるものですが、 1台当たりの月額の利用料金も保守料込みで5,000円と安価で、官公庁や大手企業をはじめ全国のいたるところで導入されています。導入実績は3,000件以上です。
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